法人税法第22条第2項とその他の取引 その3

法人税法第22条第2項とその他の取引 その3

前回、「無償による役務の享受を削除して、わざわざ、『その他の取引』には入れない」と書きました。

法人税法第22条第2項は「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。」と規定しています。

規定されているのは7つの取引です。6つではありませんので念のため。

その他の取引なので、①資産の販売、②有償による資産の譲渡、③無償による資産の譲渡、④有償による役務の提供、⑤無償による役務の提供、⑥無償による資産の譲受けは⑦「その他の取引」に含まれます。これを包括的例示と言います。

租税法で特に問題になるのが、③無償による資産の譲渡、⑤無償による役務の提供及び⑥無償による資産の譲受けの3つです。

無償取引と呼ばれるもので、⑥無償による資産の譲受けは、資産がただで手に入るのですから貸方は資産、反対科目(借方)は雑収入又は受増益になりますから、理解が比較的容易です。会計とも齟齬が生じることはあまりありません。

⑥無償による資産の譲受けは資産の譲受者の処理の話であり、対応するのが③無償による資産の譲渡、資産の譲渡者の話になります。

そうすると、⑤無償による役務の提供は役務の提供者の話であり、対応する役務の享受者の「無償による役務の享受」は法人税法第22条第2項に規定されていないことは明白です。「深い意味はないだろう」とか、「国税職員はお酒ばかり飲んでいるから入れるのを忘れたのだろう」と口の悪い人達は言いますがそんなことはありません。

「無償による役務の享受」は意図的に削除されたのは明らかです。

理由ははっきりしていると私は考えています。

私は租税法実務オンラインコースの準備を進めていますが、これを法人化して有料セミナーを開催したとしましょう。これまでの経験や投下時間を考えると、1時間のセミナー料金がだいたい幾らぐらいかは理解できます。しかしながら、セミナーを受ける皆様、皆様が勤務している会社はどうでしょうか。本来有料であるセミナーをただで受講しても、その価値がどのくらいあるのか分かる人はいないと思います。つまり、無償による役務の享受は、とりわけ、セミナー開催のような人的役務の無償による享受は、その価値が幾らなのか計算ができないのです。これを、租税法修士論文では、「測定可能性が担保されていない」と記述します。

無償による役務の提供者と無償による役務の享受者が同族会社等でない限り、測定可能性は担保されません。

測定可能性が担保され、もう1つの要件を満たした場合に、通説が考えている仕訳は相殺されるので無償による役務の享受の計上は不必要という議論が成立します。

1)測定可能性の担保に加えて、2)◯◯◯◯、2つ目の要件とは何でしょうか?(続く)

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